ラ・フランスを食べてフランス人の嗜好に思いを馳せる
伊勢丹と三越にしかお店がないためか、知名度が高いとは言えないフランス菓子のnoix de beurre(ノワ・ドゥ・ブール)。
だけど一度でも食べると「あそこ、おいしいよね」と言わざるを得なくなるnoix de beurre(ノワ・ドゥ・ブール)。
ああ、何度だって言いたいけど、なかなか名前が覚えられない、noix de beurre(ノワ・ドゥ・ブール)。
いくら覚えられないって言ったって、このお店で先だって買った焼き立てフィナンシェには骨抜きにされましたし、フランス南部の郷土菓子であるカヌレの「外カリッ中モチッ」や、バナナケーキの複雑怪奇な「茶色い味」には膝から崩れて悶え苦しむほどの衝撃を受けたものでした。
つまりはすごく信頼しているお店なのですが、店頭に並ぶ焼き菓子があまりにおいしそう。
それがゆえにケーキ類を食べるに至っておりませんでした。
おいしそうという感情にも弊害が生まれるとは。
が、今回に限って言えば、目の前にこんなビジュアルのものが飛び込んできたら我慢できませんよ。
ほら。そうでしょう?
なんか凄まじい。
純粋に、手に入れたい。
ん? あれ、モンブランもある。
これも買おう。そうそう、まだ私の秋は終わってない。
どっちがいいかな。
和栗……よりも今回はスタンダード品で勝負だ。

はー、買った。
この記事ではラ・フランス。次の記事でモンブランについて書くことにしますね。
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noix de beurre(ノワ・ドゥ・ブール)
ラ・フランスのタルト
886円
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あらためて美しい。
これはアート。
添加する砂糖の量を、めちゃくちゃ最低限にとどめた感じ。
「ジャムやコンポートなど果物の加工をする際に糖度を低くするとボンヤリとした味になる。いくら砂糖控えめが良しとされる世相とはいえ、果物としての味・香りを引き出すには必要十分な糖度というものがある」てな考えが一般的に知られる果物加工の基本と思うのですが、それの下限ギリギリを狙った感じ。
北海道の母の言葉を思い出します。
「お漬物はね、若い人が作るとどうしても塩っぱくしすぎるものだからね。気温とか野菜の状態とかを見て、食べ終わるまで酸っぱくなりすぎないくらいのギリギリの塩加減にできるのが、年の功っていうか、漬物の上手な人ってことなんだよ」
なるほどなるほど。
しかも洋梨の嫌な食感が皆無。
あの、生の洋梨食べてると、たまにこう、変にザリザリッとした舌触りの洋梨ってありません?
あれがない。実にきめ細やか。
そう、洋梨の表面は薄いゼリーでコーティングされているんですが、そのゼリーと洋梨との境目が曖昧になるほど洋梨がプルプルフルフルっとしているんですよ。
尋常じゃない。
玉子たっぷりリッチなカスタード。
ううう…こんなの知らなかったよー。
洋梨とカスタードがこんなにあうなんて知らなかったよー。
さらに土台はギュッ!とアーモンドとバターたっぷり。
ほんと、見るからに、触るからにバターまみれ。
噛みしめれば溢れ出すアーモンドのコクと香り。
ねえ、こんな享楽的なやつ、おいしいに決まってるじゃないですか。
ああ。
おいしい。
これもバランスのお菓子だなあ。
洋梨コンポートの水々しさ、真反対の玉子のまろやかさ。
バニラの甘さ、フレッシュな洋梨の甘さ。
下の生地が、ガリッガリに焼いてあるから、上との対比が効いている。
これはすごく美味しい。高度な美味しさ。
高度?
いや、洗練とともに野趣も溢れているんですよ。
生ハムメロンとか、生ハム洋梨とか、そういうものを初めて食べたときのことを思い出すかのよう。
焼いた肉にベリー系の果実のソースかけて、そこにガリガリ黒胡椒を引いて食べるみたいな、すっごく外国っぽい味。
もしかしてこれがフランス人の好みの味とかなのかなあ。
なんていうか、例えば千疋屋だったらこんな風には作らないと思うんだよなあ……とか考えてみたり。
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「noix de beurre」(ノワ・ドゥ・ブール)
「作りたて」をウリにしているケーキのお店。
ケーキと焼き菓子、どっちも美味しそうだけど、今は特に焼き菓子が人気みたいです。
店舗は、新宿伊勢丹と日本橋三越のみ。
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