今や貴重な、古き良き日本の上品中華がビールを誘う

ターミナル駅に隣接しているデパートでお弁当を買って、新幹線に乗りながらそれをツマミにビールをキュビビビッっと飲んで、ああ昼酒うまっ!とかやりたいな。

……という希望は当たり前のようにかなえられぬまま、今年のGWも終了したわけです。

日々の旅情不足は人生の満足度を激しく下げるわけで、こりゃどうにかしないとと思いつつ、それがかなりの部分、異国情緒あふれるご飯で補完できるっていうか、誤魔化せるということを、先日のカオマンガイで学んだばかり。

そんなわけで、今日は、なにかおいしいお弁当を食べて英気を養いたいと思います。

さて、伊勢丹新宿店のデパ地下に出没した私。
空腹とともに惣菜コーナーを眺め回します。

やっぱタイ料理がいいかな…。
あ、そういやインド料理もおいしかったし。
という幸せな逡巡の後、「四陸」なる中華なお店の前で足が止まりました。

四陸。
フォールーと読むようです。

中国語って、イーアルサンスーウーリューチーパーじゃなかったけ?
四が英語読みということですか。
イーアルサンスー焼きビーフン…。

それはいいとして、見たかんじ、かなりスタンダードな中華惣菜店ですね。
餃子やシュウマイが並び、ボリュームたっぷり感が演出され、日本人なら誰しも知っているような超メジャーな中華料理が前面に押し出されています。
これはストレートに食欲を刺激されますよ。
よし、今日はここにしましょう。

中華といえば、前に食べた富麗華のチャーハン。
アレもおいしかったなあ、という思いに引っ張られ、チャーハンのお弁当にしようという気持ちに。

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これこれ。
チャーハンに加え、おかずもたっぷり。
というか、ガッツリ。

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うわあ、お腹減るなあ。

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四陸(フォールー)
気まぐれ炒飯
810円
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うー。これをツマミにビール飲みたい…。

…お弁当の中身をざっとご紹介しますね。

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チャーハン。

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エビチリ。

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麻婆豆腐…って、凄まじいオールスター感。
レンチンしてどんどん食べよう!

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ん?ここにある揚げ物はなんだろう。これから齧りますか。

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…うん、鶏の唐揚げ。
味は普通! 普通の唐揚げだ!

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次は主人公に登場してもらいましょう。
チャーハン。

あはは。
「これも普通においしい、普通のチャーハンです!」的なことになると思いきや、これはなんだろう。かなり独特。旨味成分がすっごい太いんです。
香りも不思議。

これ、一般的に普通のチャーハンに使う調味料じゃないよな、絶対。
私の知っている限りタイの、エピ(海老の発酵ペースト、超濃厚な海老のうま味だらけ)みたいな味がする。
分析不可能です。

んで、食感はすごくパラパラ。
なのにぜんぜん油っぽくないし、そもそも柔らかめご飯。
そんなのアリ?
多少なりとも自宅で料理をする人間として、こういうの、ぜんぜん納得いかないです。
とんでもない科学技術でもあるんですかね。

チェッ、私だってチャーハンをパラパラにしたいよと思いつつ、箸を伸ばすエビチリ。
エビチリ。

エビチリ?

あれ!? エビチリを食べるのって、いつ以来だろ。
思い出せないくらい昔な気がするぞ。

なんか昔、エビチリってものすごくメジャー級の料理じゃありませんでしたか?
ちょっとした宴会で中華のコース料理を選ぶにしても、2900円のコースには入ってないんだけど、3400円のコースにはエビチリが入ってるんだよね。じゃあ3400円の方を選ぶかー、みたいな。
それくらい重んじられ、尊ばれていた料理だったはずが、昨今、とんと姿をお見かけする機会が減ってるように思います。

ていうか、ケチャップ味の中華料理って急激に減ってません?

昔の酢豚って、むっちゃケチャップ味だったじゃないですか。
それがいつの間にか、甘み抑えて黒酢をガッツリ効かせて、濃厚かつさっぱりみたいな方向に。

麻婆豆腐だって、昔は、花椒の味なんてぜんぜんしなくて、もっとえげつないオレンジ色で辛さの奥にはガッツリ甘さがあるような料理だったように思います。

そしてエビチリ。
現代風にアップデートされたエビチリ…を食べたことないな。

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今、目の前にある四陸のエビチリも古典的味わい。
これ以上の正解が思い当たらない、ってくらいにど真ん中の味。
ああ、いいな。こういうのも。

加えて、エビのプリプリ具合もいい感じだし、玉ねぎのザクザク具合、あの火は通っていて辛くないんだけど限りなく生に近い食感にとどまっているすごく難しそうな加熱程度もいい感じ。完璧。
脳が昭和にトリップします。
おいしいな。やっぱスタンダードって素敵じゃんか。

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これだけでも満足なのに、さらにもうひと押しの、麻婆豆腐。

エビチリほど昭和味ではないんだろうなという色。
そう、赤くない。
…って、そもそも麻婆豆腐って赤かったっけ? いや、赤かった時代があった? あれ?わけわかんなくなってきた。

豆板醤だって別にたいして赤いわけでもないし。
真っ赤になるまで唐辛子を入れたらとても食べられるような味には…ん? 激辛ブームの時代に記憶が引っ張られているのかな。
それともクックドゥ?

まあいいか。
とにかく、こちらの麻婆豆腐は茶色いんです。
そして、味が決して強くない。
味の力点をあんに置かず、豆腐の大豆のおいしさを前に出すタイプ。

ううう。
うれしいなあ。

今時っぽい唐辛子ガツン、花椒ドカン!というカラフルで華やかな花火のような麻婆豆腐のおいしさも大好きなんですよ。
でも、こういう調和タイプ。パンチ力を誇らず、一歩引いて、ジワリとおいしい。でもはだけたシャツの奥には堂々たる胸筋が…みたいな麻婆豆腐って、食べられる場所が減ってきているよに思うんですよね。

どう考えても前者の方が売れそうじゃないですか。
イケメンっぽいし。

なのに、このマイルドな味。いぶし銀。
周囲を気にしながらガサガサと包みを解いて、いい歳した大人がちょっと肩をすぼめ、嬉しそうに箸をつっこみ、ちょこちょこ食べる。
そして、冷えたビールをキュビビビッ。
車窓の風景はどんどん後に流れて……そんなシーンにはこういう味が似つかわしい。そう思います。

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「四陸」(フォールー)
こちらはお惣菜専門の会社が提供しているお店みたいです。
「チャイナチューボー」というお店も同じ会社の運営。
店舗もけっこうたくさんあるのね。
一種独特の文化圏を感じる味というか、特殊な感じで進化してきたガラパゴス感のある味というか。
高級店とも、現地臭ムンムン店とも、町中華とも違う、そんな独特の立ち位置。
これ、あまりメディアでも取り上げられてないジャンルなんじゃないですかね。
思いいつく限り一番近い味が食べられそうな場所は、ものすごく田舎の老舗ホテルの中華。
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